北九州市 時と風の博物館

日常の中で見過ごされがちな北九州市が誇るべき魅力や個性を、地域資源として私たち自身で編纂し、未来へ繋げましょう。

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4052

昭和7年創業です。

小倉の匠~手を見ればわかります~

お話をしている間にみるみる鼻緒が挿げられていきました。
背筋が伸びます。一本歯下駄。
「あなたの足の甲は薄いねぇ」
あれ?その場所からは、私の足は見えないはずなのに
( ̄ー ̄?)…..??
「手の甲の様子と足の甲は同じなんだよ」
手をとめず鼻緒を挿げながら話すのは今年、創業80周年を
迎えた老舗の履物屋『カクシン』の岡本勝さん。
25歳の時に家業を継がれて40年になります。
外から見ただけでは、こんなに多くの下駄や草履が
所狭しと並べてあるなんてとおどろきます。
下駄や雪駄の品揃えは九州一。遠くから訪ね当てて
来てくださるお客様もいるそうです。
いろいろ珍しい履物がありそうです((o(^-^)o))
ありました。私の顔よりもはるかに大きな売約済みと書かれた
30センチの雪駄。
「外国人のお友達にプレゼントしようと探していてやっとうちで
見つかったって喜んでくれた雪駄だよ。」
またありました。一本歯の下駄。これは、一体どんなときに
履く下駄なんだろう?と見ていると「履いてみるかね」と言われ
ちょっと一本歯下駄に挑戦する事になりました。
イスに腰を下ろし、片方づつそっと鼻緒に足を入れます。
「はい!一気に歩いて!」
フラフラしながら歩きます。
「これは、バランス感覚を養う為に、武道家の方なんかが
履く下駄なんですよ」
なるほど、背筋も伸びて鍛えられるかも(;^_^A
下駄は本来、台と鼻緒を別々に選んでもらい、
お客様の足の甲の高さに合わせて鼻緒を挿げる。
だから、もしどちらかが古くなってしまっても
取り替えれば、長く使えます。
「お客さんに、おばあさんの古い草履が出てきて
使えるようになりますか?と来られ、鼻緒を挿げ替えて
また使ってもらえるようになったり、母から娘へと
捨てる事無く使い続けてもらえたときに嬉しいなぁと
思うよ」と教えてくださいました。
お店は、常盤橋のたもと京町にあります。ここからは、
森鴎外が”東京にはないもの”として小倉三部作の中で紹介される
「広告塔」が見えます。
小倉には、多くの歴史と文化があり、古い地名やまちの名前にも
意味がある、後世に残していかないとと語ります。
そんな岡本さん全国組織の協同組合連合会 日本専門店連盟
(日専連)の理事長の顔もお持ちです。
いくつもの顔を覗かせる魅力溢れる方でした。
小倉にはこんなすばらしい匠がいます。
是非お越し下さい。