北九州市 時と風の博物館

日常の中で見過ごされがちな北九州市が誇るべき魅力や個性を、地域資源として私たち自身で編纂し、未来へ繋げましょう。

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刃物はお店で研がないとのこと。講師をされている、NHK文化センター教室にて

小倉の匠~すべての経験を人生の糧に~

お店は旦過市場にあります。
門司港バナナの叩き売り教室に通い、免許皆伝です。口上がすばらしく、おもわず拍手
包丁はもとより、ありとあらゆる刃物を砥ぎ、
すごい切れ味にする方がいると聞いて、
やって参りました。旦過市場の刃物店『とぎ龍』の
藤江龍夫さんをご紹介します。
藤江さんのお店では、包丁や鋏などを販売する傍ら、
刃物を研ぎます。預った刃物は、目の粗い砥石から
目の細かい砥石まで5種類の砥石を順番に使い砥ぎます。
「包丁はね、買ったばかりの時は、錆止めが塗ってあって、
砥がないと切れない。
そのことを知らない人が増えたね。昔は、
どこの家にも砥石があったけどね。
うちの売り物の包丁は砥いであるからすぐに使えるよ」と笑います。
包丁の他には、そば包丁、かつお削り、のみやかんな、
裁ち鋏、植木鋏基本的には、なんでも砥ぐそうです。
「長太郎って鋏知ってるかね?」
( ̄ー ̄?)…..??
遠方のテーラー(紳士服の仕立て屋)のご主人が、
藤江さんのうわさを聞きつけ、他で砥ぎに出したが、
全然砥げてなかったからお願いしますと来られた
とのこと。長太郎という留め具に蝶々の刻印のある、
裁ち鋏の高級品(10万円以上)です。砥いで渡したところ、
もった瞬間に「握っただけで(砥げているのが)
わかります。ありがとうございました」と帰られたそうです。
「わかる人は、わかる。いつも真剣勝負、
気持ちをいれてやらないとね」と語ります。
普通の刃物店は、こんなに色々な刃物を砥がないと聞きました。
どうして砥げるのか尋ねました。
「この仕事を始めて50年ぐらいになるね、
30歳くらいまでは、色々な仕事を経験した。
大工の見習いをしていたから、のみやかんなのことがわかるし、
おり箱の仕事にいたから刃物の付いた木の箱や台にもなじみがある。
なんでも興味があって、なんでもしたね、
ダンスホールでダンスの講師もしてたよ。
この仕事を始めてからは、包丁が砥げるようになったら、
次は鋏、床屋のバリカンなんかも砥げるようにって修行したね。」と話します。
そんな藤江さん、祇園太鼓は5歳の時から始め、
「平成の無法松」として、小倉祇園を支える一人となっています。
色々なことに興味を持ってチャレンジし続け、そしてその経験が、
83歳の藤江さんの仕事や生き方を豊かにします。
パワフルで私も負けてられない!と元気をくれる魅力的な方でした。
小倉にはすばらしい匠がいます。
小倉っていいところでしょ☆