北九州市 時と風の博物館

日常の中で見過ごされがちな北九州市が誇るべき魅力や個性を、地域資源として私たち自身で編纂し、未来へ繋げましょう。

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紫川イルミネーション1

紫色に輝く川に想いを込めて…

紫川イルミネーション2
紫川イルミネーション3
小倉のまちの中心部を流れる「紫川」
一昔前はひどく汚れた時代があったのですが、現在では、アユが遡上し、上流ではホタルが生息する川にまで再生したそうです。
紫川周辺では季節ごとにさまざまなイベントが開催されていますが、なかでも、毎年冬になると実施されている「イルミネーション」は、紫川にまつわる伝説とあいまって、私のお気に入りの風景のひとつです。
むかしむかし、そのむかし。
川のほとりの漁師の村に、若者エビスが幸せに暮らしていたそうな。ところが、ある夜、海賊が村を襲い、あっという間に村は火の海となってしまった。荒れた村を立て直すため、エビスは川上の山に住むキクヒコに助けを求めに行く。
他の村の者が山に入ると殺される。そのおきてを知りながら、エビスは勇敢に山に入っていった。山に向かう途中、思いがけずキクヒコの美しい妹ムラサキと出会う。
エビスが村を思う勇敢な気持ちに心うたれるムラサキ。心優しい娘は、「私が兄にお願いしてみます」と提案する。
妹の熱意に打たれ、キクヒコは一つの条件を出した。「ひと月以内に、鯛を100匹持参するように」と。エビスは鯛を準備するために村へ帰った。ムラサキは、「私はこれから毎日、紫色のアイゾメの実を川に流します。川が紫色に染まっている間は、私がエビスさまの成功を祈っていると思ってください。どうぞ約束の日までに」と。
約束の日に間に合わせようと、毎日漁に出るエビス。紫色に輝く川の流れに、ムラサキの想いを感じながら、さらに漁に励んだ。約束の日も近いある日、荒れた海に無理やり乗り出したエビスは、運悪く荒波にのまれてしまう。
川上のムラサキはエビスの死も知らず、約束の日を過ぎてもただ毎日、アイゾメの実を流して、エビスの帰りをいつまでも待ち続けた…。
川はいつしか「紫川」と呼ばれるようになった。
毎年冬になると川は「紫色」に彩られます。川岸一面に広がる紫色は川面に映り、紫の絨毯を敷き詰めたように輝きを増します。
そう。それは、まるでムラサキが流したアイゾメの実が流れているように。
冬の凛とした空気の中、エビスとムラサキの伝説に想いを馳せて、いつまでもいつまでも紫色の輝きに見入ってしまうのです。