月への道
■ 時風3137 ■ 2016-07-01 ■ 投稿者: 散苦遊介
「ここの横断歩道は…」
横で、夫がぼやいている。
「信号が車本位に設定されて、待ち時間が長いんだよな」横断歩道で
半ば足踏みしている、いらいらしている。
瞬間湯沸かし器なんだ。昔々の言い方ならね。
ようやく信号が青になって、歩き始めた。
「君は、この場所から月までの距離を知っているかね」
「………………」
「そうか、そうだろうな、君に聞くだけアホだった」
(そうよ、あなたはアホなの! )
横顔を見ると、なんと先刻までのイラチが嘘のように、
夫はひどく上機嫌で笑っている。
(気味悪いわね、どうしたのよ)
横断歩道を渡り切るころ、わたしにも判った。
「そうか、380000Kmなんだ」
「ああ、少し遠いけど、行ってみる?」
真正面の看板が、月までの道のりを親切に案内している。
夫に腕を組んで、わたしも少し笑った。
横で、夫がぼやいている。
「信号が車本位に設定されて、待ち時間が長いんだよな」横断歩道で
半ば足踏みしている、いらいらしている。
瞬間湯沸かし器なんだ。昔々の言い方ならね。
ようやく信号が青になって、歩き始めた。
「君は、この場所から月までの距離を知っているかね」
「………………」
「そうか、そうだろうな、君に聞くだけアホだった」
(そうよ、あなたはアホなの! )
横顔を見ると、なんと先刻までのイラチが嘘のように、
夫はひどく上機嫌で笑っている。
(気味悪いわね、どうしたのよ)
横断歩道を渡り切るころ、わたしにも判った。
「そうか、380000Kmなんだ」
「ああ、少し遠いけど、行ってみる?」
真正面の看板が、月までの道のりを親切に案内している。
夫に腕を組んで、わたしも少し笑った。