男は謎の関門海峡
■ 時風3153 ■ 2016-07-18 ■ 投稿者: 散苦遊介
海峡の沿岸で、夫と二人で渦潮をぼんやり眺めている。
希望退職なのに、長年勤務していた職場を去ってから、どうも夫は精気を失ったみたいで、
心配だった。
(男らしく、しゃきッとしろ!)
と言いたいところだが、男女共同参画社会の今日では、禁句だよね。
…遠くの豆粒みたいだった船が、みるみる近づいて、
それは見たこともない巨大なクレーンを載せている。
橋の下をくぐれるか、と不安に思っているうちに、クレーンは頭を下げることもなく、
ぐんぐん突進してきた。
「あッ……」
夫は声を上げる。目を円くして、固まっている。
起立した鉄柱の固まりは、橋脚の間を…強く突き刺して行く。
…通過したクレーン船を見送っていると、押し寄せた波が岸壁をドーンと叩いた。
頭からザブンと飛沫を浴びて、哀れな濡れ鼠が二人。
「わっはははは……」
笑いながらピョンピョン跳ねながら、夫は上着に付いた海水をはたき落としている。
おしとやかにハンケチで顔を拭きながら、私は怒っている。
ふと気づくと、夫の様子が変わっている。
笑い顔はいつもどおりの三枚目だが、背筋がシャキッ。
(なぜ、急に元気になったの)
結婚していても、男のことはさっぱり分からない。
撮影 門司区・和布刈神社境内
希望退職なのに、長年勤務していた職場を去ってから、どうも夫は精気を失ったみたいで、
心配だった。
(男らしく、しゃきッとしろ!)
と言いたいところだが、男女共同参画社会の今日では、禁句だよね。
…遠くの豆粒みたいだった船が、みるみる近づいて、
それは見たこともない巨大なクレーンを載せている。
橋の下をくぐれるか、と不安に思っているうちに、クレーンは頭を下げることもなく、
ぐんぐん突進してきた。
「あッ……」
夫は声を上げる。目を円くして、固まっている。
起立した鉄柱の固まりは、橋脚の間を…強く突き刺して行く。
…通過したクレーン船を見送っていると、押し寄せた波が岸壁をドーンと叩いた。
頭からザブンと飛沫を浴びて、哀れな濡れ鼠が二人。
「わっはははは……」
笑いながらピョンピョン跳ねながら、夫は上着に付いた海水をはたき落としている。
おしとやかにハンケチで顔を拭きながら、私は怒っている。
ふと気づくと、夫の様子が変わっている。
笑い顔はいつもどおりの三枚目だが、背筋がシャキッ。
(なぜ、急に元気になったの)
結婚していても、男のことはさっぱり分からない。
撮影 門司区・和布刈神社境内