北九州市 時と風の博物館

日常の中で見過ごされがちな北九州市が誇るべき魅力や個性を、地域資源として私たち自身で編纂し、未来へ繋げましょう。

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なんてたって京舞

京都の舞妓さんたちが、デパートの催場で踊っている。というので見に来た。
嫌がる夫を従えて、たくさんの見物客をかき分けて、前のほうに突き進んだ。
私は、京都の「舞妓」と「生八つ橋」と「脂取り紙」が大好きなんだ。
それを夫は、あからさまに軽蔑している。
だが、今日はなんだか素直に私と肩を並べて舞台を見ている。
(ああ、そうなんだ…)
舞妓さんではなくて、芸妓のお姐さんがお気に召したらしい。
そちらの踊りだけに、ヤラシイ視線を向けている。
(ぽってりと色つぽいのが、お好みだもんね)
(私はヤセの針金人形だもんね、プン)
優美な舞いが終わって、ちょっとの休憩になった。
隣の夫がなんとなく体をムズムズしている。最前列に出たいらしい。
「さあ、特売場に行くわよ」
夫のジャケットを引っ張る。
「おれ、もっと見たい、家元の井上八千代さんの京舞は…」
ぐずぐずとウンチクを傾けはじめた。
そのとき、一人のオジサンが大胆にも舞台の真ん前に進出した。
見物客大勢の、非難と苦笑と羨望の熱視線が激しく集中した。
夫は、すごすごと私の後ろに従って退場……。
小倉北区井筒屋新館付近で